夕闇の旋律
声帯に宿る魔法の力は一般に、より綺麗に、より柔らかく響く『綺麗な』声であるほど強くなると言われている。
だみ声ならほとんど無いのと同じだし、オペラ歌手とか、声帯を鍛えている人なら相応の魔法が宿るという。
「俺の声は人にとって最も心地の良い声らしくて、ただの言葉で人をどうにかしてしまうほどの魔法が宿っている……らしい」
「ええ、と。つまり、悠矢くんが『寝てろ』って言ったから私は、寝ちゃった?」
「そういうこと。そのつもりがなくても、声を聞いた人全てに影響するみたいで」
「そうなんだ……すごいね」
「いやいや。俺が言うのもなんだけど、俺の声のせいで足悪くしちゃったんだから、もっと責めたって構わないんだぞ?」
「あ、そうか……」
全治五ヶ月は全治六ヶ月に上塗りされてしまっていた。
そのことはついさっき診察に来た医師から聞いていた。
「いいの。誰のせいでもないから」
「でも……」
「どうしてもって言うなら」
詩音は悠矢にもっと近づくように手招きした。
「てやっ」
そしてその額にでこピンをかました。
「って」
悠矢は驚いて額を覆う。
詩音はそのまま指を悠矢に向けて言った。
「もう入院中暇でしょうがないの。いつでも歌えるわけじゃないし。だから、話し相手になってよ」
悠矢はぽかんとして詩音の顔をまじまじと見つめた。
「あ、ああ。そんなんでよければ、喜んで……」
だみ声ならほとんど無いのと同じだし、オペラ歌手とか、声帯を鍛えている人なら相応の魔法が宿るという。
「俺の声は人にとって最も心地の良い声らしくて、ただの言葉で人をどうにかしてしまうほどの魔法が宿っている……らしい」
「ええ、と。つまり、悠矢くんが『寝てろ』って言ったから私は、寝ちゃった?」
「そういうこと。そのつもりがなくても、声を聞いた人全てに影響するみたいで」
「そうなんだ……すごいね」
「いやいや。俺が言うのもなんだけど、俺の声のせいで足悪くしちゃったんだから、もっと責めたって構わないんだぞ?」
「あ、そうか……」
全治五ヶ月は全治六ヶ月に上塗りされてしまっていた。
そのことはついさっき診察に来た医師から聞いていた。
「いいの。誰のせいでもないから」
「でも……」
「どうしてもって言うなら」
詩音は悠矢にもっと近づくように手招きした。
「てやっ」
そしてその額にでこピンをかました。
「って」
悠矢は驚いて額を覆う。
詩音はそのまま指を悠矢に向けて言った。
「もう入院中暇でしょうがないの。いつでも歌えるわけじゃないし。だから、話し相手になってよ」
悠矢はぽかんとして詩音の顔をまじまじと見つめた。
「あ、ああ。そんなんでよければ、喜んで……」