夕闇の旋律
「なぁ、詩音はいつ退院するの?」

「え?」

悠矢の質問はあまりに突然だったものだから、詩音は動揺して、それから少し考えた。

「無茶しなければあと三ヶ月、かな。また熱出しちゃったし」

「肺炎だっけ?」

「うん。死ぬかとおもったよ」

「ごめん……」

「あ、いや……気にしなくていいんだよ。怒ってないし」

「あ、じゃあさ。詩音が退院するまでに俺が歌詞作るよ」

「……悠矢くんが?」

「俺も暇だし。それまでに曲全部完成させてくれよ」

「そっか……じゃあ、お願いしていい?」

「絶対いいの創るから。期待しててくれよ」

「わかった。じゃあ曲CD-Rに焼くね」

詩音は引き出しからCD-Rを取り出して、ノートパソコンに挿入した。

ウィーンと作動音がして、詩音はキーをいくつか叩く。

それからしばらくしてCD-Rがノートパソコンから弾き出されると、詩音はそれをケースに入れて悠矢にさしだした。

「はい。大事にしてね」

「……わかってる」

悠矢はケースをかざして光の反射を眩しそうに眺めた。

詩音はその様子を見て、自分でも気づかないうちに微笑んでいた。
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