夕闇の旋律
屋上へつながる少し重いドアを開いたとき、冷たい風が入ってきた。
「うわっ寒!!」
「もう冬だね……」
詩音は長くなってきて結んでいた髪をほどいた。
髪は風に煽られてゆらゆらと揺れて、そして詩音の背中に落ちた。
「ほんとにこんなとこで歌うのか?」
「院内じゃ邪魔でしょ?」
詩音は片足でもたもたとフェンスの近くまで寄って、そこにあるベンチに腰掛けた。
「あ、しお……」
歌が響いた。
確かな旋律、繊細な歌詞。
それを引き立てるようにして歌う技術。
悠矢が意図しなくても魔法を使ってしまう天才なら、詩音は才能を開花させた秀才。
伴奏がなくてもそれは十分に美しい歌で、悠矢はそれに聞き惚れていた。
「これはね。私が歌うようになったきっかけ」
歌い終わって、詩音はそう言った。
「小さい頃、誰かと喧嘩して、それで公園に行ったとき、女の人が歌ってて、その歌があんまり綺麗だったから、近くでずっと聞いてた」
「……それで?」
「それから私、よくその公園に行ってね、その人にいろんなことを教えてもらった。歌い方もそのときに、ね」
「うわっ寒!!」
「もう冬だね……」
詩音は長くなってきて結んでいた髪をほどいた。
髪は風に煽られてゆらゆらと揺れて、そして詩音の背中に落ちた。
「ほんとにこんなとこで歌うのか?」
「院内じゃ邪魔でしょ?」
詩音は片足でもたもたとフェンスの近くまで寄って、そこにあるベンチに腰掛けた。
「あ、しお……」
歌が響いた。
確かな旋律、繊細な歌詞。
それを引き立てるようにして歌う技術。
悠矢が意図しなくても魔法を使ってしまう天才なら、詩音は才能を開花させた秀才。
伴奏がなくてもそれは十分に美しい歌で、悠矢はそれに聞き惚れていた。
「これはね。私が歌うようになったきっかけ」
歌い終わって、詩音はそう言った。
「小さい頃、誰かと喧嘩して、それで公園に行ったとき、女の人が歌ってて、その歌があんまり綺麗だったから、近くでずっと聞いてた」
「……それで?」
「それから私、よくその公園に行ってね、その人にいろんなことを教えてもらった。歌い方もそのときに、ね」