夕闇の旋律
「ねえ、悠矢くん」

ベッドに腰掛た悠矢を下から見上げるように、上半身を傾けて悠矢の顔を見た。

さらり、と髪が左肩に寄る。

「どうして入院してるの?」

詩音は滅多なことには関心を寄せないが、一旦興味を持ち始めると止まらない性格だった。

それは、歌という才能を引き出しもしていたが、大抵は人に疎まれる悪いクセだった。

だが悠矢はああそのこと、と相槌を打っただけだった。

「見る?」

「え?」

詩音が応える前に悠矢は詩音に背中を向けて服を脱いだ。

そこには。

「痣?」

「そう。まだらのね。今はほとんど閉じた状態だけど、この痣が翼みたいに背中を覆って広がったときに俺死ぬらしいよ」

と、悠矢は重いことを何でもないことのように、さらりと言ってのけた。
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