夕闇の旋律
屋上の重いドアを開けて、詩音は一瞬、目が見えなくなったと思った。

真っ白だった。

病院は白いから、雪と同化しちゃっている。

ぐらぐらと頭が回る。

雪が降るから白いのか、雲が下りてきてるから白いのか……。

詩音と悠矢は傘を広げて、いつものベンチに座る。

ベンチにも雪が積もってたけど、手で払った。

柔らかくて、冷たくて、痛い。

二人で並んで空を見上げる。

真っ白だった。

傘が重くなって、詩音は傘を落とした。

だけど詩音は空をずっと見上げていた。
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