夕闇の旋律
「よお、悠矢」

がらっと病室のドアが開いたと思ったらそこにいたのは幼馴染だった。

詩音じゃなかった、と落胆して、ふとそれに気づき慌てふためく。

――そうか、待ってたのか、俺……。

「おい、悠矢?」

返事をしない悠矢を、幼馴染は怪訝そうにまた呼んだ。

「あー……やぁ、太一」

「こんにちは、橋本くん。私のこと、覚えてるかしら」

後ろにまだ人がいた。

長い黒髪の女子だ。

「えー……と?」

まったくもって、覚えがありません。

「委員長だよ、クラスの。春にも来てただろ?」

太一がとっさにフォローする。

そこでようやく悠矢は思い出した。

――そういえば、一応俺も中学生だった。

だから、中学に席があるのは当然なわけで。

つまり、委員長なる存在がたまに俺を訪問することもある意味当然ではあったのだ。

今まで雑事は全部太一に押し付けられていたみたいだけど。

委員長が出張ってくるなんて、いったいどういうことだろう。
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