夕闇の旋律
「それは……その」

悠矢は口ごもった。

確かに、悠矢は声帯に宿った魔法を使える。

使えるというか、使わないで済む方法を知らない。

「その声、特別なんでしょう?確かに綺麗な声だわ。しかも、幼い頃からそうだったって聞いてる」

「そういや、俺と知り合った頃からもう『そう』だったよな」

「でも、私は魔法なんて使えたことはないし……それに、橋本くんにも声変わりってあるでしょう?本当に魔法が使えるの?本当に魔法ってあるの?」

好奇心の旺盛な委員長なことで。

研究者体質なのかもしれない。

悠矢は自分の主治医のことを思い出して少しうんざりした。

「俺はよくわからないけど……」

悠矢は横目で開いたドアを見た。

「詳しいことは、詩音が知ってるかも」
< 35 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop