夕闇の旋律
悠矢の病室に来たはいいけど、既に先客がいた。

なんどか会った事のある悠矢の両親ではなく、同級生らしき二人だ。

「え、と……こんにちは」

とりあえず挨拶をしてみる。

パジャマにショールという格好なので、なんとなく落ち着かない。

悠矢の病室にいる二人は制服だったからだ。

この辺りでは良く見る制服なので、どこのかは知っていた。

「貴女は……誰かしら」

長い黒髪の女子が首を傾げる。

気の強そうな美人だった。

むぅ。

負けた気がする。

「ん……?もしかして」

一方男子の方はいぶかしげに詩音を見ていた。

そしてすぐに悠矢に向き直る。

「もしかして、この子が、悠矢の被害者?」

被害者ってなんだ。

悠矢はむすっとして頷いた。

「詩音だよ。詩音、こっちは俺の幼馴染で太一。こっちは委員長の五月さん」

「そっかー。あんたがあの時の子かぁ、よろしく詩音」

「え、あ、あの時って……?」

「私は橋本くんのクラスの委員長で、五月 美緒よ。ミオって呼んで」

めまぐるしいなぁ、もう。
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