夕闇の旋律
「橋本くんが特別?どういうことなの?」

ミオが詩音にたずねた。

「声帯には魔法が宿ってるの。誰にでもね。でも、それだけだと魔法は使えない。ちゃんと魔法を使う意志と、相応の力がないとダメだから」

「でも俺は魔法使うつもりはなかったんだけど」

「それなんだよ……意志なんてなくても、声帯に宿った魔力が桁違いだから勝手に魔法が溢れてくるの。しかも、加工してない純粋な魔力だから余計たちが悪くって」

「加工ってどういうことだ?」

「あ、そっからかぁ……。えーとね、普通魔法使うときは、皆歌を歌うでしょ?その歌詞や旋律、あとは技術が魔力を変換するの。こういうのをやってくれ、ってお願いして魔法はそれに納得したらそれを叶えてくれる」

「納得しなかったら?」

「簡単でしょ?失敗する。でも安心して。人間が使える魔法なんて本当に些細なものばかりだから、暴走はしないよ。悠矢くん以外はね」

「俺以外……か」

悠矢はそう言って苦笑した。

「話を戻すね。悠矢くんの声が魔法じゃなくて、ただの魔法の元なの。ちゃんとお願いして、それを叶える力だからこそ、魔法なんだよ。悠矢くんのは自然災害に近いね!」

にぱーっと詩音は満面の笑みで微笑んだ。

「しかも、悠矢くんの魔力の方向性はエンチャントみたいだし、最悪だね!」

それはもう、楽しそうに。

「ど、どうして最悪なの?その、エンチャントって……」

「あ、うん。それね」

詩音はいつもの調子に戻って続けた。

「エンチャントって、付与って意味なの。~しろ、って言われたら魔力がその人に影響を与えてそうさせちゃうの。そうだね、人やモノに魔法をくっつけて、自分の思い通りにさせちゃう。魔力がたくさんあればあるほど、大きな願いが叶うの。ただ、なにかを創ったり、っていうのはできないんだ」

「あくまで、なにかを与える力ってことなのね。面白いわ」


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