夕闇の旋律
「悠矢くんは、自分の限界を超える魔力を持っているせいで、常にそれが外に漏れ出しています。それはつまり、悠矢くんの生命力も外に漏れ出している、ということ」

野崎は反応しない。

とっくに知っていることだったのだろう。

「人が一生に生み出せる生命力の絶対量は限られています。だから、生命力を大量に使う人は早く死に、穏やかに生きてきた人ほど長生きするわけです」

詩音は続けた。

「なのに、悠矢くんは魔力も高いけど、無駄に魔力を使ってもいるんです。……さっき言いましたよね。言葉だけでも魔法が使えるのは、魔力を『創造』できる人だけ、だと。つまり、それだけたくさんの。自分の魔力の器分よりもたくさんの魔力が必要なのです。それを、悠矢くんは、呼吸をするたびにそれだけの魔力を使っている」

詩音ははっきりとした口調になり、言った。

「もう、限界でしょうね。悠矢くん」

そして、と詩音はそこで口を閉じた。

詩音はフェンスの網を掴んではるか下を見た。

「死に、対抗しようとした魔力の跡が悠矢くんの、あの痣です。だから、悠矢くんの病気は。アウィング症候群は、ただの寿命で死ぬだけのものなんですね」

そうでしょう?と言って詩音は振り返った。

野崎は顔を伏せていた。
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