夕闇の旋律
長い、沈黙が続いた。空は朱色に、そして紺に色を変えた。

「よく、そこまで気づいたな。そこまで結論を出すのに、一体、いくつの障害があったと思ってる」

「ええ、まあそうですね。今私があたりまえのように言ったことは、仮定の段階にすぎないものですし、初めて聞く話もあったでしょう?」

「何者だよ、お前は……俺たち研究者も知らないことさえ知っているようだな」

「魔法使いだって研究者なんですよ。魔力はなんだって教えてくれます。歌えば歌うほど、真理に近づくのです。もちろん、その辺にいるような簡単な魔法しか使えないような人たちには魔力の問いかけに気づけないでしょうが」

「お前は、何がしたいんだ?」

「悠矢くんをただ死なせたくないんです。そこで、提案があります」

一つ、と詩音は人差し指をぴっと立てた。

「魔法が教えてくれるのは自分達のことだけです。だから、先生に理論と証拠をあげます。それを発表すれば名声も高まり、富も手に入ります。野心家の先生のことです。私の協力は欲しいでしょう?」

「そのかわり?俺が教えられることなんてないぞ?お前はなんでも知っているようだからな」

「何でもは知りません。言ったでしょう、魔法が教えてくれるのは自分達のことだけだと。だから、今までのアウィング症候群の患者のカルテ、日記などの情報を、あるだけ全部、私にください」
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