夕闇の旋律
屋上に入る前にお互い靴を履きかえて扉をあけた。
すでに屋上は真っ白で、二人にいつかの風景を思い出させた。
「行こうか」
悠矢が先に屋上に出て行って、詩音がそれに続いた。
二人は一番高いところに上った。
「このあたりでは一番高いところだけど、雪で何も見えないね……」
「まだ降りはじめてから30分くらいしかたってないのにな」
「うん……」
悠矢は空を見ようとするように顔を上げた。
雪が上から絶え間なくゆっくりとまっすぐに降りてきて、真っ白というよりは灰色に見えた。
詩音は手のひらを合わせて前に出して、手袋に雪を積もらせていた。
それをただ無心に見つめていた。
「ねぇ……悠矢くん」
「なに?」
「いつの間にか、また雪に閉じ込められちゃったみたい」
「ほんとだ。詩音、服に雪積もってる」
「いいの、これは。ほっといても。悠矢くんこそ積もってるよ」
「うー……」
悠矢は頭を振ったり肩を払ったりして雪を落とした。
「思い出すね、一年前」
「初めて詩音が魔法を聞かせてくれた日だったな」
「うん……それともう一つ。ねぇ、キス……してくれないかな」
「あ……。……わ、わかった」
悠矢は手袋を外すとそっと詩音の頬に手を伸ばした。
そっと、詩音が目を閉じる。
その表情は幸せそうに微笑んでいる。
悠矢はためらわずにそっと唇を重ねた。
「寒くないの?」
詩音が手袋をはずしてコートを脱ぎ始めた。
「大丈夫、こうすればね」
詩音はそう言うと悠矢の手を取って背中合わせになった。
悠矢が不審に思っていると、詩音はもう片方の手も握った。
そして、すぅ、と息を吸った。
すでに屋上は真っ白で、二人にいつかの風景を思い出させた。
「行こうか」
悠矢が先に屋上に出て行って、詩音がそれに続いた。
二人は一番高いところに上った。
「このあたりでは一番高いところだけど、雪で何も見えないね……」
「まだ降りはじめてから30分くらいしかたってないのにな」
「うん……」
悠矢は空を見ようとするように顔を上げた。
雪が上から絶え間なくゆっくりとまっすぐに降りてきて、真っ白というよりは灰色に見えた。
詩音は手のひらを合わせて前に出して、手袋に雪を積もらせていた。
それをただ無心に見つめていた。
「ねぇ……悠矢くん」
「なに?」
「いつの間にか、また雪に閉じ込められちゃったみたい」
「ほんとだ。詩音、服に雪積もってる」
「いいの、これは。ほっといても。悠矢くんこそ積もってるよ」
「うー……」
悠矢は頭を振ったり肩を払ったりして雪を落とした。
「思い出すね、一年前」
「初めて詩音が魔法を聞かせてくれた日だったな」
「うん……それともう一つ。ねぇ、キス……してくれないかな」
「あ……。……わ、わかった」
悠矢は手袋を外すとそっと詩音の頬に手を伸ばした。
そっと、詩音が目を閉じる。
その表情は幸せそうに微笑んでいる。
悠矢はためらわずにそっと唇を重ねた。
「寒くないの?」
詩音が手袋をはずしてコートを脱ぎ始めた。
「大丈夫、こうすればね」
詩音はそう言うと悠矢の手を取って背中合わせになった。
悠矢が不審に思っていると、詩音はもう片方の手も握った。
そして、すぅ、と息を吸った。