導く月と花に誓う
会計を済ませたあたし達はガサガサ、とスーパーの袋を下げて…
…あ、いや、持っているのはあたしじゃないんだけど…
慣れた足取りでいつもの道を歩いていた時だった。
「あら…もしかして、千秋じゃない?」
やけに耳につく声に、あたしの全身からゾクリ、と寒気が走った。
特徴のある、甲高い声。
あたしは、ゆっくり振り向き。
「………雅…」
彼女の名を口にした。
と、同時に自分の目を疑いたくなった。
夏だというのに、豪奢なドレスに身を纏い、ピンクのレースが施されている日傘を斜めにさしている。
「久しぶりね、千秋」
彼女は、ふふっ、と嘘の笑顔をあたしに見せると、ゆっくり近づいてきた。
「…どうしてここに…」
「パパの仕事の都合でちょっとこっちに来たのよ。
ちょうど良かったわ。
庶民の生活も味わいたいと思っていたところだし」
…ふん、すいませんね。庶民で。
…みなさん、お分かりの通り。
この、東条雅は、れっきとしたお嬢様なのです。