導く月と花に誓う



また、だ。

…また、雅の罠にハマってしまった。






「……それじゃあ…
全部、雅の差し金だったって、こと…?」


「…はい」


「いきなりあたしの前に現れたのも…?」


「……っ、…はい…」


「あたしに、言ってくれた言葉も……?」


「…貴方を探していたことは事実です。

ですが、私は雅さまの指示通りに動いていたまでです…」




…自分で、落胆したのがよくわかった。




なんて、バカなんだろう。





「……そっか…、ごめん…
…あたし、ちょっと寝る…」





狐燈の返事はなかった。





ずっと、正座を崩さず、ただただ俯いたままだった。





それから恐らく…

出ていったんだろう、と思う。




あたしが部屋から出てきた時にはすでに、狐燈の姿はあとかたもなく消えていたから。





ただ開けられた窓から、さわり、と涼しい風が吹き、オレンジ色の明かりが部屋へ入ってきていた。











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