導く月と花に誓う
そういえば、いつだったか雪華さんが言っていた…
『ある日、突然その場所から行方を眩ましたのよ…』
…あれは、じゃあ…どういうこと…?
…というのも、だって…
話を聞く限り、あの時はまだあたしも雅も幼すぎる。
ましてや、生まれているかもわからない。
───もしかしたら、あれは…
気づけば、あたしは家を飛び出し、夕焼けに染まる道を全力で駆け出していた。
はぁはぁ、と息を弾ませながら周りを見渡して走る。
すると、一目でわかる豪奢なドレスを纏う人と、見慣れたスーツ姿の人が一緒に歩いているのを見つけた。
そして、走りよろうとした瞬間。
二人は向き合い、そして…
狐燈が雅の顔に手を添えると、お互いの唇を重ねた。
その光景を見た時、あたしはそれ以上近づくことも逃げることもできなかった。
本当に、あたしはなんてバカなんだろう…。
あたしは、二人の姿が見えなくなるまで、ずっとその場に立ち尽くしていた。