導く月と花に誓う
……不甲斐ない…
彼女を護ると言っておきながら、一番傷つけたのは自分自身だ…。
さわさわ、と涼しい風が吹き抜け、木々がざわざわ、と音を響かせて揺れる。
…その時。
「───…、…」
小さな、微かな音が聞こえた。
……誰か、いるんだろうか。
いや、しかし…あたりを見回すが、誰かいる気配はない。
気のせいか、とは思ったがやはり小さな音が、風に乗って届いてくる。
と、不意に目に入ったのは何よりも大きな、樹木だった。
そっ、と近づいて、仰いでみる。
そこには太い枝の上に座りながら、どこかを真っ直ぐ見据えている人がいた。
…いや、違う。
ずっと…、もう何年も想い続けていた人だ。
…分からないはずがない。
彼女は風に吹かれながら、真っ直ぐ、前だけを見据えていた。
―――その姿は、とても美しかった。