導く月と花に誓う
…しかし、今の自分には声をかけることも、できない。
ただ、彼女を見ることしか…
許されてはいない―――…
…否、それすらも
許されていないかもしれない。
…本来なら今すぐにでも手を伸ばして、彼女を抱き締めたい。
思えば思うほど、自分は最低だと突きつけられる。
クソッ、と顔を手で覆った時。
「………こ、とう…?」
不意に聞こえたその声で、時間が止まった感覚に陥った。
さわり、と優しく吹き抜けた風が頬を撫でる。
ゆっくり、見上げればふわりふわり、と風に吹かれる彼女の視線とぶつかった。
しかし、一瞬で気づかされる。
…彼女と話すことなど、もってのほかだと、いうことに…
すぐに、頭を下げて立ち去ろうと踵を返した時だった。
「───なんで、そうやって逃げるの!?」
彼女の、ひときわ大きく叫ぶ声が響き渡った。