導く月と花に誓う
本当は、このまま去れればいいものの…
それが出来るはずもない。
ゆっくり、その木に近づき見上げると、私は口火を切った。
「……今の私に、申し上げることは何一つ、ございません…」
「…それは、あたしだから…?」
「いいえ。貴方こそ、だからです。
今さら、言い訳するなど…。
私は……」
そう言って、一呼吸置き…。
「自分の身を守るためなら貴方をも裏切る、最低で卑劣な妖怪ですよ」
自分を自分で嘲笑うかのように、ふっ、と笑い瞳を細める。
「…ですから、どうか、私のことはお忘れください」
貴方は貴方の歩むべき道を…。
そして、彼女に向かって最後にスッ、と頭を下げる。
しかし。
「…忘れたくても忘れられない
ことだってあるの!バカ!」
予想外の言葉が降ってきた。