導く月と花に誓う



「…申し訳、ありません…」




絞り出すように答えると、ゆっくりあたしを降ろす。




そよそよ、と吹いてくる風が狐燈の袴と九尾を靡かせている。




あたしを降ろしたあと、彼はそのまま跪いた。





「貴方を困らせないためについた嘘を
逆に困らせ、泣かせてしまうなんて…」




あれで困らなかったらすごいよ、それ…。




ハァ…、といろんな意味でため息をつく。





「……本来は、私から言うべきでした…」




ふいにゆっくりとした、穏やかな声が降ってきた。





「……?」


「…恐れたのです。

貴方を失うことを恐れ、
そこから逃げた結果がコレです」




そう言って、とても哀しそうな瞳をあたしへと向けた。




淡青の瞳が、ゆらり、と翳る。





「この鎖のせいで、ずっと好きだった
女性に嫌われたくありませんでしたので」





その言葉に、熱を帯びてあたしの胸が脈打った。










< 125 / 378 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop