導く月と花に誓う
「この変態、腹黒」
「ありがとうございます」
「だから、誉めてない……」
ハァ…と顔を手で覆ってため息をつき、それからよし、と気合いを入れる。
「…そろそろ、話、つけなきゃ…」
「そうですね…」
そう言ったあたしの横で、狐燈がふっ、と微笑んだ。
――――あたしと雅は、小さい時はそれでも仲は良かった。
家にあたししかいない時はこっそり雅のお屋敷に忍びこんで、二人でよく遊んでいた。
それが昼でも、夜でもお構い無しに。
孤独なあたしに、雅はいとこで、
たった一人の、親友だった。
…でも…
その関係が見事に壊れたのはお互い中学に入る前だった…。
いつものように、遊びに行ったあたしに突然、向けられた言葉。
『あんたなんか、所詮誰からも必要とされてないのよ!
あたしは善意で仲良くしてただけ。』
寂しかった。
ああ、またか…。と、そう思った。
雅はお嬢様で、あたしは庶民。
例え、いとこだったとしても身分は、変わらない。
それでも、あたしなんかと仲良くしてくれただけで、涙が出るほど嬉しかったんだ。