導く月と花に誓う



少ししゅん…となりながら、廊下をそのまま進んで行くと、一つのドアが見えた。






…ここ、だ…。


なんか入る前から嫌になってきた…



ドキドキしながら、静かにノックをすると、


中から「どうぞ」と声が聞こえてきた。



ガチャン、とドアノブを下へおろしてソーッ、と引く。


そして、そうっ、と入るつもりだった。






…が。




遠くの方から足音が聞こえ、しだいに近づく音にあたしは思わず、慌てて中へ入ってしまったのだ。





………あ。やば…。






「…そのうち、来ると思ってたわよ」




その声に、ビクリ、としながら振り向くと、背後を見せて窓の外を眺めている雅がいた。




「……雅…」


「何を言っても、狐燈はまるで脱け殻のようだったから」




そう言うと、カツン…と音を鳴らしてあたしと向き合ってきた。






「…どうやったって…
お金や、権力、なにを使っても…

あたしのモノには出来なかった…」












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