導く月と花に誓う
「…お祖父様もそうだった。
いつも、千秋のことばかり…
だからあたしは、千秋が羨ましかったのよ。
千秋のように、なりたかった…」
……それは…。
「…雅さ、なんか勘違いしてない?」
あたしの言葉に雅は、は?と眉をしかめる。
まぁ、そりゃそうか。
鬼野郎のいう通り…
東条春樹という人物は一言で済ませば“変”。
そして、なにより不器用な人だった。
「おじいちゃんが、本当に思っていたのは、雅だよ」
「……ウソよ…」
「ウソなわけあるか。
だって、いつもおじいちゃんが楽しそうに話すのは、雅のことだったから」
…そう。
いつも、おじいちゃんが話す話題は雅のことばかりだった。
…だからこそ。
「あたしは、雅が羨ましかったよ」
孤独なあたしとは反対に、誰からも愛されていた雅。
それが、すごくすごく羨ましかった。
「…でも、あたしだけ…
部屋に入れてもらえなかったじゃない」
ムッとして言った雅に、あたしは「あー、それは…」と前置きをして。
「恥ずかしかったからじゃない?」
ハハ、と軽く笑って言った。