導く月と花に誓う
思い、想う
すると。
「──…千秋さま!」
あたしを呼ぶ、これまた聞きなれた声が響く。
そして、同時に姿を現すと、鬼野郎へ視線を向けた。
「よぉ、狐燈」
「…鬼藍さま…」
「あのお嬢様からは解放されたか」
「…はい」
鬼野郎の言葉に、狐燈は頭を下げる。
それを見た鬼野郎もそうか…、と小さく呟き、ふっ、と笑う。
「ほらよ。良かったな」
「…わわっ」
そして、あたしを狐燈の方へ押しやると、ザッ、と踵を返した。
「ご心配をおかけしました」
「お互いさまだ」
再びペコリ、と頭を下げて言った狐燈に、鬼野郎は片手をあげて去っていく。
……なんか初めて言い合ってない姿を見た…
鬼野郎って実は、すごいいいヤツなんじゃ…
「…そうだ。おい、人間。
その狐に飽きたら、この俺が代わりになってやるよ」
……なかった。
やっぱ鬼野郎だった。
もう期待しないにしよう…。
ちょっとカッコいいかも!
って、思ったあたしがバカだった。
それよりも、いい加減…
もう人間呼びやめてほしい…
ハァとため息をついて、ん?、と気づいた時には、鬼野郎の姿はすでに綺麗に消えていた。
…何だったんだあの人…
何しに来たんだろう…