導く月と花に誓う
すると、スッ、とあたしの片手が取られる。
「…しかし、あの言葉は、私の本心だったのですよ」
「……あの言葉…?」
もはや涙目でおうむ返ししたあたしの言葉に、はい。と頷く。
「一度、貴方を裏切った手前…
元へ戻ろうなど…烏滸がましいこと…」
……そんな…。
「ですから…もう戻らないつもりで
忘れてください、と言ったのです」
そう微笑んだ笑みの中には、わずかな嘲笑を含んでいた。
するとさらに…。
「仮とはいえ契約は続いたままですので、消える心配はありません…。
…ですが…
消えても消えなくても、私にとってはもうどうでもいいこと…」
そう言って目を伏せながら、あたしの手の甲へ顔をうずめる。
恥ずかしいなんて言ってられない。
…だって…
確かに彼の身体が小刻みに震えているのが……よくわかったから。
それを見て、あたしは気がつくと彼をぎゅっ、と抱き締めていた。