導く月と花に誓う
あたし達は無言のまま帰路を歩く。
太陽は相変わらずじりじり、と地面を照らす。
「…ねぇ……」
「あれ、千秋ちゃん?」
無言に耐えきれなくなったあたしが口を開いた瞬間、どこかで聞いた覚えのある声が遮った。
慌てて、そこへ視線を向けると。
……うわ…
「…、宏樹さん…」
そこにいたのは飛鳥の彼氏である、…高尾宏樹だった。
もうすでに察していると思うが、あたしはこの男が大がつくほど、嫌いである。
ただ、飛鳥の彼氏だから普通に接しているだけであって。
それはきっと、彼のほうも同じだと思っている。
「うわっ…お前、何やってんの?
てか、そいつ誰だしっ!
…はっ、もしかして援交かよ!?
相変わらずキモいわ、お前ー」
突然プッ、と噴き出したかと思うと、ケラケラ笑いながら見下したように、あたしにその言葉を向けた。
そう。
こういうやつだから嫌なのだ。
なにが、『はっ』なのか…。
いつも思うけど、飛鳥はこいつのどこがいいんだか…。
これだけは、飛鳥のセンスを疑う。
と、いつも思ってしまう。
ハァ、とため息をついた瞬間。
「――――…今の言葉、聞き捨てなりませんね」
いつもより低い、刺のある声があたしたちの間に響いた。
目の前のヤツはもちろんだけど、ついあたしまで、その声に身震いしてしまった。