導く月と花に誓う
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「黙っていて申し訳ありませんでした」
目の前で正座をする狐燈は、あたしに向かって頭を下げる。
とりあえず家に入ったものの、あたしたちの間には気まずい空気が流れていた。
「先ほど、千秋さまが見た通り、
私は妖狐でございます」
そう言って、軽く頭を下げたまま上げようとしない。
「ですが、私は本当に貴方を探していたのです」
「…あたしは、何かした覚えはないよ?」
「いえ、貴方は、闇の中にいる
私を、救って下さいました」
…そんなことあったかな…
いや、普通ないよ。そんなこと。
そして、狐燈は複雑そうな表情で続けて言った。
「覚えていませんか。
今から12年前くらいでしょうか…
まだ、雪が降る頃を。
ただでさえ、人の通りが極端に少ない雪道の上。
そこで倒れていた私に、
貴方は言ったのです…。
『あなたは、しあわせだった?』
最初は理解できなかった。
この少女は、何を根拠にそんなことを言っているんだ…、と。