導く月と花に誓う



簡単になびいたら……か。





はぁ、と誰にも気づかれないようにため息をついた。…はずだった。







「……何かあったか」






しかし、気づかれてしまっていた。







「…ああ、…いいえ…。」


「御前……。
…何を、思い出した」





彼は、眉をひそめると、いつもより数倍低い声で問い掛けてきた。





……が。




「……さぁ。
貴方さまには関係ありません」





今だけは、誤魔化すことしか出来ない。






「あいつには話したのか」



「…………。」



「───刻々と、お前の姿が消えていく時間が迫っていることを…」





そう言った双眸は月の光により鋭さを増す眼光は、真紅に輝く。






「──―魂が消え行く時、全ての記憶が甦ってくる……

…だったよな」






黙り込む私に彼の言葉だけが、虚しく響いた。













< 181 / 378 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop