導く月と花に誓う
簡単になびいたら……か。
はぁ、と誰にも気づかれないようにため息をついた。…はずだった。
「……何かあったか」
しかし、気づかれてしまっていた。
「…ああ、…いいえ…。」
「御前……。
…何を、思い出した」
彼は、眉をひそめると、いつもより数倍低い声で問い掛けてきた。
……が。
「……さぁ。
貴方さまには関係ありません」
今だけは、誤魔化すことしか出来ない。
「あいつには話したのか」
「…………。」
「───刻々と、お前の姿が消えていく時間が迫っていることを…」
そう言った双眸は月の光により鋭さを増す眼光は、真紅に輝く。
「──―魂が消え行く時、全ての記憶が甦ってくる……
…だったよな」
黙り込む私に彼の言葉だけが、虚しく響いた。