導く月と花に誓う
教室に置きっぱなしだったカバンをとって、あたしは家に向かって力を緩めることなく走った。
頭痛は未だに治まらないし、身体だって悲鳴をあげている。
でも、あたしの苦しみなんて、きっと彼にとってはどうってことない。
それを思えば、今ここで弱音を吐くことなんてできない。
普通なら、30分かかる距離を約半分の時間で、あたしは家へとたどり着いた。
錆びた扉を勢いよく開け、ドタドタ、と足音を響かせる。
「―――…狐燈…!?」
しかし、反応はなかった。
それは、今までそんな人は存在していなかったんじゃないか。
そういうくらい静寂な雰囲気を醸し出している、普通のあたしの部屋だった。
………っ
ハァ、ハァ、と肩で息をしながら顔に手をあてて、しゃがみ込んだ。