導く月と花に誓う



教室に置きっぱなしだったカバンをとって、あたしは家に向かって力を緩めることなく走った。





頭痛は未だに治まらないし、身体だって悲鳴をあげている。






でも、あたしの苦しみなんて、きっと彼にとってはどうってことない。




それを思えば、今ここで弱音を吐くことなんてできない。







普通なら、30分かかる距離を約半分の時間で、あたしは家へとたどり着いた。





錆びた扉を勢いよく開け、ドタドタ、と足音を響かせる。









「―――…狐燈…!?」









しかし、反応はなかった。





それは、今までそんな人は存在していなかったんじゃないか。




そういうくらい静寂な雰囲気を醸し出している、普通のあたしの部屋だった。







………っ






ハァ、ハァ、と肩で息をしながら顔に手をあてて、しゃがみ込んだ。













< 196 / 378 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop