導く月と花に誓う



「なぜここが…」




その声は、聞き慣れているはずなのにやけに、恐ろしく今にも凍ってしまいそう。





「……鬼藍、さんが…教えてくれて…」





その、なんとも言えない雰囲気に、ドクン、ドクン、と胸が高鳴って、ついどもってしまった。







「あの御方も、口が軽いですね」


「そんな…っ」


「貴方も、あまり…
信用しない方がよろしいかと…」






ゴゥ…と、風が舞い上がり、微かに見えた彼の瞳は鋭い眼光を放っていた。


その違和感に、ドクン、と胸が震えた。





これが、妖怪なんだ……


と、初めてそう思った。





艶かしくて、恐ろしい…。



心のどこかで知っていたはずなのに…



知らない恐怖が、完全にあたしを支配していた。







「……どうして、そういうこと…」



「…ある種の、嫉妬…といってもいいですね」





そう言うと、彼の身体は反転しあたしに向かってゆっくり近づいてきた。













< 200 / 378 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop