導く月と花に誓う
「なぜここが…」
その声は、聞き慣れているはずなのにやけに、恐ろしく今にも凍ってしまいそう。
「……鬼藍、さんが…教えてくれて…」
その、なんとも言えない雰囲気に、ドクン、ドクン、と胸が高鳴って、ついどもってしまった。
「あの御方も、口が軽いですね」
「そんな…っ」
「貴方も、あまり…
信用しない方がよろしいかと…」
ゴゥ…と、風が舞い上がり、微かに見えた彼の瞳は鋭い眼光を放っていた。
その違和感に、ドクン、と胸が震えた。
これが、妖怪なんだ……
と、初めてそう思った。
艶かしくて、恐ろしい…。
心のどこかで知っていたはずなのに…
知らない恐怖が、完全にあたしを支配していた。
「……どうして、そういうこと…」
「…ある種の、嫉妬…といってもいいですね」
そう言うと、彼の身体は反転しあたしに向かってゆっくり近づいてきた。