導く月と花に誓う
でもやがて…あたしは落胆した。
…というよりも、どうしていいかわからなかった。
「………透け始めてる…」
すでに薄い霧が纒い、彼の身体は所々が見えなくなってきている。
「……もう、よろしいのです」
あたしの言葉に彼は静かに、かつ穏やかに、そう言った。
「今までの悪行を考えたら
これが、罪滅ぼしになります…」
その言葉に、あたしは…。
「――…ばっかじゃないの?」
精一杯、彼を睨んで言ってやった。
「…過去がどうとか…
一番大切なのは、自分の気持ちなんじゃないの?」
…あたしだってそうだった。
過去にずっと囚われて、自分の気持ちを飲み込んでいた。
「それを教えてくれたのは、狐燈じゃん」
今までにない強い風が吹きつけて、周りの木々をより一層ざわめかした。