導く月と花に誓う
でも、あたしはその違和感の正体がわからず、「なんでもない」と呟く。
そして、彼が口を開く。
「……貴方には、私の本当の姿を御見せする義務がございます」
「…本当の、姿……?」
「はい。この姿ではない、
別に存在する…、本来の姿です」
そう言われた途端、あたしの脳裏には
あの、恐ろしい姿が浮かび上がってくる。
それを、感じとったのか…。
「…しかし、貴方がお望みするならば
私は如何なる時も、それに従います」
そう言って、あたしに微笑んだ。
しばらく静寂が、包み込む。
遠くで、ピチチ…と、小鳥の軽やかに鳴く声が聞こえてきた。