導く月と花に誓う
美しく、かつ妖艶で…
とても高貴な雰囲気を醸し出している
――――…一匹の狐だった。
あの時見た、業火の如く燃え上がるような尻尾とは違い…
それはもう、満開の華が咲いているように…
九つの尻尾は、風に吹かれて揺れていた。
「さあ、千秋さま…。
――――契約を…」
そう言った彼のところに向かって、あたしはその一歩を出した時。
「――――黒瀬…っ!」
聞き慣れた声が、あたしの二歩目を阻んだ。
……え?
その拍子に、あたしは大きくハッ、とした。
言うなれば、我に返った感じ。
「行くな!黒瀬!」
素早く後ろを振り返れば、そこには息を切らした木村くんが膝に手を当てて叫ぶ。
「───そいつは、あの狐じゃない!」