導く月と花に誓う
それから、あたしは少しだけ安堵した。
ずっと感じていた違和感の正体はこれだったのか、と。
「…確かに狐燈は、そんな素直じゃないし…
大切なことなんて、何一つ言ってくれないし。
自らお願いしてくるなんて、雹でも降るんじゃないかってくらいだし…。」
言葉に出せば出すほど、あたしの不満は溜まっていたみたいだ。。
「…それに、あなたの言葉は…どこか冷たくて…
とても綺麗…」
言ってから、フンッ、と顔を背けて鼻を鳴らすと、相手の狐は、一瞬フッ、と笑った。
その瞬間。
竜巻のような強力な風が駆け抜けてもはや、目すら開けられない。
「これは、驚いた。
まさか、そこまで見破られていたとは」
そして、聞こえてきたのは…
今まで聞いたことのない青年の声だった。
吹きつける風もしだいに落ち着き、その姿も鮮明に映ってくる。
その姿は、すらりと伸びた亜麻色の長い髪を持ち、さらに紺碧の着物を纏っていて…
一見、不審的だったけど、つい見入ってしまった。
…うん。
この人…ダレ…?