導く月と花に誓う
もう一匹の狐
────目の前の狐燈ではない人が、「失敗、失敗。」と高らかに笑いながら独り言を呟く。
いや、もう呟いているとかそういう範囲ではない。
「…ダレ、あれ…」
走りよってきた木村くんも眉を潜めて、ソレを見る。
「おや、これは申し遅れた。
我が名は、來孤(らいこ)。
以後お見知りおきを」
ん?とあたし達の方へ視線を向けたライコさんはスッ、と会釈をして、フワリ、と笑った。
「…………」
「…………」
もう、なんて返していいかわからないあたし達はただ呆然とする。
「黒瀬……。
まさか、こいつと契約……してないよな…?」
ボソリ、と怪訝そうに囁いてきた木村くんに、あたしは思い切り首を振る。
「…しないよ!!」
その言葉に、木村くんはとても安心した様子で、「良かった。」と呟いた。