導く月と花に誓う
気まぐれなのは君と風
みなさん、どうもこんにちは。
黒瀬千秋です。
「ちょ、千秋!見て!
富士山が見える!」
と、あたしの隣にいる親友が肩をバシバシ叩く。
…いたっ、えー、逸れました。
有意義かつドタバタだった夏休みはあっという間に夢幻となり、学校が始まって結構経ったわけですが…
あたし達には、一大イベントが残っていたのです。
そう、只今修学旅行中により新幹線の中でございます。
「あ、ほら!富士山富士山!」
「写真とろ!写真!」
と、こんな感じで始終大盛り上がりのあたしの班。
一方、あたしはというとお察しの通り、
ちらちらキョロキョロ落ち着かない。
「……あたし、ちょっと
飲み物買ってくるね」
そう告げて、あたしはふらり、と通路へ出た。
それから、周りに誰もいないことを確認。
「……なんで、ついてきた…?」
「それは、もちろん。
千秋さまをお護りすることが
私の役目でございますから」
「………」
嬉しそうに、耳と尻尾をパタパタさせる姿に、はぁ…と、どうしようもないため息が底をつかない。