導く月と花に誓う



「―――少々、散歩を致しましょう」


「…は?」


「京洛は、私の郷里なのでございます」




そう言った孤燈の表情は、とてもキラキラしていて、あたしはつい、笑ってしまった。




すると、突然霧に包みこまれ、ふわり、と小さな風が吹きぬける。






そして、あたしの前に姿を現したのは。




さらさら、と揺れる銀色の毛並みに2つの耳。



思い思いに揺れる、美しい九つの尻尾。





窓から入る月明かりに照らされ、さらに妖艶さを放つ眸(ひとみ)。






それは。


パッと見、とても綺麗な銀狐のようで…

でも、彼から出ている雰囲気は、“妖怪”だという事実を醸し出していた。











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