導く月と花に誓う
「あの姿は、全てに共通する姿です」
「それって、誰でも見ることが出来るってこと?」
「さすがは、千秋さま。
その通りでございます。
また、あの姿は中和されている故に
人の姿より、負担が軽いのです」
そう言って、トン、と前足を出してあたしに一歩、近づいた。
風が、ふわり、と駆ける。
「…さぁ、宵はすぐに過ぎてしまいます。
―――参りましょう」
そう紡いだ瞬間、あたし達の周りに小さな青白い焔(ほのお)が現れて。
「――――…え」
あたしはつい、後退してしまった。
「ご安心下さい。
それは"狐火"といって、特に害はありません」
ボゥ、と燃える"それ"はまるで、あたし達を導くかのように、ずっと先まで照らしていて、とても幻想的。
「―――さぁ、乗ってください」
艶かしく、高貴な姿で彼は凛々しく言った。
何かの催眠術にも掛かってしまったか、と思わせるほど、あたしの身体はそこへ、吸い込まれるように…。
一歩一歩、そこへ近づいていた。