導く月と花に誓う
バクバク、とすごい速さで心臓を脈打たせながら、ソッ、と目をあけてみると。
あの、神々しい妖狐の姿は消え、代わりにいつもの狐燈の姿があたしの双眸に映し出された。
こんな時に、って思うけどあたしは、やっぱりその姿の方が好きだな、なんて…思ったりする。
そして、彼は再び、瞳を濁らせて言葉を紡ぎあげる。
「…お怪我は、ございませんか?」
と。
やっぱり、確実に。
あの時から彼の様子は、明らかにおかしい。
「…、大丈夫だよ」
地面におろしてもらったあたしが静かに笑ってそう言うと、狐燈は、はー、とため息をつく。
その時。
「だから、申しましたでしょう」
鈴のような声が響いた。