導く月と花に誓う
ちいさな世界の真ん中で
え、と振り返れば、そこにはぴょこん、とまっすぐ立った耳が伸びている猫鈴さんがいるわけで。
「本来あるべき姿にも返ることが出来ないとは…」
「…貴方の本来の記憶すべてが、戻りかけているんでしょう」
複雑な表情で呟いた狐燈に、一歩ずつ近づきながら猫鈴さんが答える。
「あの方と、出会った以前のすべての記憶が、」
「…………。」
「あとは、貴方と…千秋さん。
…貴方次第です」
そう言って、月の光を帯びた紺碧色の瞳をあたしに向けると。
その姿を、闇の中へ綺麗に消したのだった。
提灯が灯るこの場所で、ただ静かになった空間だけが埋め尽くす。