導く月と花に誓う
「実を言うと、春樹さまとも一度、来たことがあるんです」
「…おじいちゃんと?」
「はい。
あの日も、こうして夜空の中を散歩したものです」
「…大切な、思い出なんだね」
「覚えているのは、それくらいです。
残っている記憶の方がごくわずかですので…」
そう静かに言って。
「こうして、貴方との思い出も
少しずつ、消えていくんでしょう…」
こんな、華やかな空の下でそんな似つかわしくない言葉が響く。
「───…ない…」
「……千秋、さま…?」
抱えられた中、ぐっと頭を下げて、そう呟いた。
静かに、狐燈があたしの名前を呼ぶ。