導く月と花に誓う



タッタッタッ、と地面を駆ける二人の足音だけが響く。



あたしは、ただひたすらに砂狗の腕に引っ張られていた。





「──砂狗、どういうこと!?」





そしてやっとのことで発せられた言葉は、結局、その本人によってシカトされる。






一体、なんだというんだ。




と、そんなことを考えている時。




ふと、あれ…?と思った。





九本の尾を持つ狐。


──狐燈の姿が、どこにもなかった。



まるで、初めからそこにいなかったように。



初めから、そんな人なんていなかったように…。






その時。






「───千秋!」




突然発せられた砂狗の声でハッ、とすると。





「────戻ってこい!!」





再び紡がれたその言葉で、あたしの意識はそこで途絶えた。











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