導く月と花に誓う
…でも。
それでも、きっと。
その過去を狐燈は、忘れてはいないだろう。
ふと、机に目を向けると、一冊の手帳が目に入って。
ゆっくりそこへ向かうと、埃を被りながらも、その姿を明らかにした。
それは、茶色の革でできたA5くらいの手帳だった。
ほどよく年季の入ったそれは、しばらく誰の手にも触れられていないことが窺える。
いや、でも。
まてよ、と思って。
そんなはず、あるわけない、
という考えに行きついた。
だって、おじいちゃんが死んでから、それを誰も触らないはずがない。
大切な、形見なんだから。
きっと、触らなかったんじゃない、
────触れなかったんだ。