導く月と花に誓う
「ど、どうしてここに…?」
「人間なんぞに教える筋合いはないが…。
また俺も、お前と同じ考えなわけだ」
それは、つまり。
「―――兄さんの居場所探しさ。
俺だけじゃない。
雪女も、鬼も、犬神も、
みんな兄さんを探している」
ああ、もう…。
どうして、こう、
温かくしてくれるんだ、この人達は。
「それに、俺は、見たわけじゃないんだ。
―――母上の最後を」
そして、目の前の高貴なる妖狐は静かに紡ぎあげるのだった。
「我は、幼すぎた」
と。
ほろほろ、と涙が溢れてくるのがわかった。
でも、あたしはそれをぐ、とこらえてゆっくり、再び手帳へ視線を合わせた。