導く月と花に誓う
「…お願いします。
どうか、どうかあたしの大切な人を…
かけがえのない人を、守らせてください」
その姿は、まるで滑稽だ。
でも、それでもあたしには狐燈しかいない。
……違う、狐燈しかいらない。
「人間」
と、ふいに隣から、どうやら、あたしを呼ぶ声が聞こえて。
え…、と振り向いてみれば。
「そいつに触れてみろ」
今まで見たことのない、穏やかな表情で彼は、あたしに向かってそう言った。
「…でも、」
「いいから。早くするんだ」
なんて、偉そうに…。
とは思ったけど。
あたしはゆっくり、それに触れてみた。
「……え、…なん、で…」
先程まで、誰一人、何一つ触れさせなかったそれは、静かにあたしの指を受け入れた。
まるで、その手帳に心があるかのように…。