導く月と花に誓う
──200X.11.XX 霜月。
狐燈が、わが家にきて
どれくらいがたったか。
やつは、時折、苦しむ姿を
見せるようになった。
おそらく、記憶の戻りかけであろう。
日に日に、苦しむ回数は
その量を増やしていった。
“大丈夫かい”
そう聞けば、
“ええ、大丈夫です”
その一点張りであった。
記憶は、いずれ戻る。
しかし、それは同時に
何かの暗示であることは
間違いないだろう───。
あたしは、何も言わず
ただ、ページをめくる。
ペラペラ、と簡素な音が響き、ようやくそのページに行き着いた。