導く月と花に誓う


──200X.11.XX 霜月。




狐燈が、わが家にきて
どれくらいがたったか。



やつは、時折、苦しむ姿を
見せるようになった。



おそらく、記憶の戻りかけであろう。


日に日に、苦しむ回数は
その量を増やしていった。




“大丈夫かい”


そう聞けば、


“ええ、大丈夫です”


その一点張りであった。




記憶は、いずれ戻る。


しかし、それは同時に
何かの暗示であることは
間違いないだろう───。









あたしは、何も言わず

ただ、ページをめくる。



ペラペラ、と簡素な音が響き、ようやくそのページに行き着いた。












< 345 / 378 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop