導く月と花に誓う
「それから、あたしの前で不自然な行動を見せていたのは……」
自ら消した記憶が、再び甦ろうとしていたから。
「……どう、狐燈?」
そうやって、後ろに向かって囁いた時。
「────ご名答でございます」
愛しい人の、愛しい声が響いた。
「兄さん…!」
正面にいる來狐さんは、実質目の前にいる人物に驚嘆の表情で叫ぶ。
「………」
「千秋さま」
そんな声で呼ばないで。
「許さないんだから」
後ろを向いたまま、あたしは言葉を投げる。
「…申し訳ございませんでした」
「そんな言葉、いらない」
そう言った瞬間、あたしは後ろから思いきり抱きしめられた。
正面にいたはずの來狐さんが、何故か突然いなくなっていたのは、ここでは無視しておくとしよう。