導く月と花に誓う
「感覚は忘れません。
遠くで、その感覚は覚えています。
例え、すべてを忘れたとしても
心は全部、覚えております」
その言葉に、一気に涙がこみあげてきて。
泣くな、泣くな。
と、必死に堪えたが、結局、塞ぎきれなかった。
「必ず、会いに行きます。
いつになるかはわかりませんが、必ず。
それが、私のけじめです」
ポロポロ、と流れ落ちる涙を、あたしにはもう、止められない。
「千秋さま。
私は、千秋さまと出会えて
とても幸せでした。
そして、ずっと、この先も
貴方だけを愛しています」
それと。と彼はあたしの耳元で『それ』を小さく、囁いた。
そして、その言葉が、あたしの聞いた彼の最後の言葉であり。
その姿を見たのが、その時が最後であった。
彼は再び、あたしの前からそのすべてを消したのである。