導く月と花に誓う



「感覚は忘れません。
遠くで、その感覚は覚えています。

例え、すべてを忘れたとしても
心は全部、覚えております」





その言葉に、一気に涙がこみあげてきて。




泣くな、泣くな。


と、必死に堪えたが、結局、塞ぎきれなかった。





「必ず、会いに行きます。
いつになるかはわかりませんが、必ず。


それが、私のけじめです」





ポロポロ、と流れ落ちる涙を、あたしにはもう、止められない。






「千秋さま。

私は、千秋さまと出会えて
とても幸せでした。

そして、ずっと、この先も
貴方だけを愛しています」




それと。と彼はあたしの耳元で『それ』を小さく、囁いた。






そして、その言葉が、あたしの聞いた彼の最後の言葉であり。




その姿を見たのが、その時が最後であった。






彼は再び、あたしの前からそのすべてを消したのである。













< 363 / 378 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop