導く月と花に誓う
そこには。
黒いスーツを纏い、異様な雰囲気を醸し出す人。
銀色の髪が、月夜に照らされながらサワサワ、と風に靡く。
あたしが、この数年待ち続けた最愛なる人が立っていた。
少しずつその人はまっすぐこちらに向かってくるので、あたしは石段から降りる。
そして、やがてお互いの表情が見える位置まで来た時。
「───お初にお目にかかります。
黒瀬さま」
と、すぐさま跪いて、丁寧に、あたしへ言葉を贈った。
「本日より、貴方の護衛役に命じられました次第です」
「…名前は?」
「それが、記憶にございません。
貴方さまのお好きなようにお呼びください」
その言葉に、一気に涙が溢れてくる。
でもそれは、決して悲しいわけではなくて。
ましてや、つらいからでもない。
怒りでも、落胆でも何でもない。
ただ、純粋に嬉しかったから。
それだけ。