導く月と花に誓う
いったい何が起きたのか、まったくわからないあたしは唖然とするばかり。
そんなあたしを、女の人は一瞥すると、ズカズカ、とまっすぐ鬼野郎へ近づいていった。
そして突然、胸ぐらを掴むと、ぐい、と引き寄せる。
「この馬鹿!
あんたはどれだけの人を巻き込めば
気が済むのよ!
あげく、人間まで巻き込んで!」
一気に捲し立てあげると、バッ、と手を放した。
その気迫に圧倒されていると、女の人の視線はこちらに向いた。
「相変わらずですね、雪華(せっか)さま」
「あなたもね、狐燈」
先ほどの鋭さは消え、ふっ、と穏やかな笑顔になる。
「…と、初めまして。人間ちゃん。
あたしは雪華、雪女なの」
…人間ちゃん…?
「…は、初めまして。
…黒瀬千秋です」
思わずペコリッと勢いよく頭を下げた。