導く月と花に誓う
ウソだ…嘘だ…
……どうして、ここに…
《…千秋さま…?
どうかされましたか?》
と、狐燈の声でハッ、と我に返る。
「何もないよ!じ、じゃあ!
あ、迎えはいらないからね!」
強く念をおしてから、反応を聞かずに携帯を閉じた。
一方、あたしの眼前の人物はゆっくり、近づいてくる。
それから、お互いの顔がはっきり見える位置まで近づいた時。
「……千秋」
その人が、あたしの名を呼んだ。
「………おとう、さん…」
そしていま、混乱している中でその言葉を発することがあたしにとって。
…精一杯だった。
…怖い…
…逃げたい…
『――お前は、失敗作だ』
…やめて。
どんどん昔の記憶が、鮮明に甦ってくる。
「…久しぶりだな、千秋」
「………はい」
あたしの胸は、バクバクとすごい音を立て続ける。